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既存物件を福祉施設や病院に用途変更する上で、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。ここでは福祉施設や病院への用途変更に適した物件を開設するとともに、実際に福祉施設や病院へ用途変更した物件の施工事例も紹介します。
福祉施設も病院も、建築基準法ではどちらも「特殊建築物」という扱いになります。特殊建築物への用途変更を行う際は、用途規模が200m2以上の場合には確認申請が必要になります。
確認申請をスムーズに済ませるためにも、建物の検査済証がある場合は事前に用意し、検査済証を用意できない場合は設計事務所や工務店にその旨を伝えましょう。
さらに、福祉施設への用途変更は停電時などのための非常用照明の設置が必要になり、床面積の大きさによっては階段が2つ以上必要になります。
また、消防設備としては用途に「宿泊」が含まれる場合はスプリンクラーや自動火災装置機が必要になり、デイサービスなど宿泊を目的としない建物の場合でも消火器や誘導等の設置が必要です。
既存物件を介護施設や福祉施設、病院へ用途変更するためには、ほとんどの場合で行政機関への確認申請が必要になるため、あらかじめ検査済証が残っている物件を選ぶのが良いでしょう。
検査済証を紛失してしまった、あるいは建物の新築時に完了検査を受けておらず検査済証を取得していない建物の場合でも、用途変更をすることは可能です。
その場合は、国が定めるガイドラインに従って建物の現状調査を実施し、検査済証を再取得する必要があります。詳細は用途変更を依頼する設計事務所や建設業者に確認しましょう。
また、建物の規模によりますが、福祉施設や病院として建物を利用するのであれば、ほとんどのケースで階段が2つ必要になります。階段を増築するには費用だけでなく、構造上の問題やコンプライアンスなど様々な面で問題が発生する可能性があります。そのため、福祉施設や病院として用途変更するのであれば、あらかじめ階段が2つ以上ある建築物がおすすめと言えます。
【画像付き】東京での用途変更事例と
その申請・施工会社のまとめ
CABON一級建築士事務所では、寄宿舎(会社の寮)を老人ホームへ用途変更した実績があります。用途変更の確認申請が必須な面積の物件でしたが、検査済証がなかったため確認申請が出せない状況だったものを、既存不適格調査と建築基準法適合状況調査を行い報告書を作成。用途変更をすすめることができた事例です。
老人ホームとして建築基準法上必要となる設備は設置しつつも、間取りは変更せず設計。さらに元々きれいな状態であったトイレや浴室も再利用することで、費用を抑えた施工ができたそうです。
建築再構企画は、東京都千代田区の某テナントを活用して障がい者支援施設へと用途変更した実績があります。プロジェクト全体を短期間でスムーズに進めるために、テナントの一部を他の用途とすることで福祉施設としての用途規模を抑えて、確認申請を提出することなく施工を進めました。
また、福祉施設へ用途変更する上で消防設備が必要になりましたが、「消防設備を設置することでビル全体の資産価値が向上し、今後テナントを誘致しやすくなる」というメリットをビルオーナーにご理解いただき、オーナー負担で消防設備を設置しました。これにより、依頼主であるユーザーの負担を抑えつつコンプライアンスも遵守した用途変更が可能になりました。
建設再構企画は他にも、神奈川県川崎市にあった某物販店舗を福祉施設へ用途変更した実績も持っています。この事例では、既存物件が竣工時に完了検査を受けておらず検査済証を取得していなかったため、建築再構企画が独自に適法性調査を実施した上で行政機関に確認申請をしました。
また、ビルオーナーと折衝を行いテナントの賃貸期間を延ばすとともに、オーナーには建築再構企画が実施した適法性調査の資料や確認申請図書を提供しました。これにより、テナントとオーナーの双方にメリットがある用途変更を実現しました。